レモン運ばる 北原耀子
闇に浮くプラットホームに待つひとら くるぶしなきごと歳晩の町
菜花サンド食みつつひらくPCに少女の自爆テロ在り まひる
冬玻璃のつめたき書庫の下闇に蝉の死骸は仰向きてあ り
黎明に雪降るあはれ端末に虐殺、王子誕生、SALE・・・
夕つ日の繊きひかりの帯のなかとほる電車にメール打ちつつ
奴豆腐の角崩しつつ他愛ない話したるよレモンの灯の下
抽斗を開ければ銀河眠られぬ君記したるノート思ほゆ
きみの兄より拒絶の葉書届きし夜光る鋏で薔薇を剪らうよ
硝子戸に斜めに冬の光差し大文字畳店日曜の朝
三輪のバイクに積まれ瀬戸内のレモン運ばる神田明神下